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三次元幾何学的形態測定法 ①基礎編

・はじめに

本記事では、三次元幾何学的形態測定法(Three-dimensional Geometric Morpho-metrics)について解説します。文章量削減のため、三次元幾何学的形態測定法:3DGM法と省略します。


3DGM法に関する解説記事の初回となる今回は、3DGM法の基礎的な部分について解説します。


本解説は、以前に解説した標本写真(二次元材料)を用いた幾何学的形態測定法の発展編となります。3Dモデルを用いた解析も、基本原理は二次元の場合と同じなので、まだ読了していない方はこちらを参考に基本原理を理解しておくと、スムーズに飲み込めると思います。



・主流となりつつある3Dモデルを用いた形態学研究

研究の厳密性や再現性が求められる昨今、形態学においても研究に利用したデータの共有が必須となりつつあります。遺伝情報を用いた分子系統学や集団遺伝学などの分野では、研究に利用した遺伝情報データを"GenBank"という遺伝配列データベース上に公開することが強く推奨されています。遺伝情報を用いた研究が増加するほどGenBank上のデータベースも充実し、さらなる後発の研究を後押しする...という良いスパイラルが生まれています。


形態学分野でも、"Morphosource"に代表される形態データベースが整備されつつあります。特に研究に用いた3Dモデルや、3Dモデル構築に用いる生データであるCT連続画像などは、論文投稿時にオンラインデータベース上への公開を推奨されることが多いです。GenBankと比べるとまだまだデータ数は少ないですが、各国博物館や研究施設が収蔵標本の形態データを精力的にアップロードしてくれていることも相まって、どんどん情報が集約しています。これに付随して、3Dモデルを用いた形態学研究が主流となりつつあります。


3Dモデルを用いた形態研究には、解剖学的・記載学的研究のほか、今回紹介する3DGM法などを用いた形態変異研究などが挙げられます。多くのサンプル数が必要となる種内形態変異に関する研究はまだまだ少ないですが、目・科レベルの比較研究は既に名だたる学術誌に掲載されており、3Dモデルを活用した形態研究は現在最もホットなトピックのひとつであることは間違いないでしょう。



・二次元と三次元の違いは?

①"面"の変異を検出できる


標本写真などを用いた2DGM法では、定義つきランドマークによって””を、セミランドマークによって””を評価できます。3Dモデルを用いた3DGM法では、これに加え””を評価できます。



3DGM法では、定義つきランドマークの3点を結んだ三角形を面として捉え、この三角形内に等間隔の点群を設定することができます。これにより、2DGM法では評価(ランドマークの制定)が難しかった、脳頭蓋(braincase)や大腿骨頭(femoral head)などの平滑構造の変異を検出できるようになりました。



②データの客観性・再現性が高い


2DGMで用いる標本写真は、ノギスによる距離測定ほどではないにせよ、撮影者や撮影環境、機材の違いの影響を受けてしまいます。CT撮影画像から構築する3Dモデルは、機材による差は出づらく(解像度には違いが生じる)、3Dモデル構築時も下手にいじらなければ客観性を担保できます。また解析に用いたデータは、冒頭でも述べたように通常オンラインデータベース上に公開することになるので、再現性が高いのも特徴です。



③形態変異の包括的な検出が可能


2DGMは面ごとに解析が分割されるため、部位ごとの変異を包括的に検出できないという問題点がありました。例えば頭骨を例に挙げると、腹面(ventral)は蝸牛骨や歯など重要な要素が多い一方で、背面(dorsal)は評価しにくい脳頭蓋などで構成されるため、重要な変異が薄まってしまう問題がありました。3DGMでは解析対象とする部位全体のランドマークにおける形態変異を包括的に検出できる点で、2DGMより優れているといえます。



④ランドマーク制定の自動化によりさらに効率と客観性を高められる


従来の2DGMでは、基本的にはすべての標本写真に対して手動でスケールとランドマークの設定を行っていましたが、3DGMではランドマークの自動転写や自動生成をしてくれるツールが開発されています。


例えば、私が普段使用しているSlicerMorphでは、"ALPACA(Automated Landmarking through Point cloud Alignment and Correspondence Analysis)"と"PseudoLMGenerator"という拡張モジュールが利用可能です。ALPACAは、ランドマーク制定済みの1つ(あるいは少数)の参照標本から他の標本へランドマークを自動転写する拡張モジュールです。PseudoLMGeneratorは、3Dモデルのサーフェス全体に均一な点間の疑似ランドマークを生成するモジュールです。


このように、解析環境によって使用するソフトやモジュールは変わりますが、3DGM法を実施する上で便利な自動化ツールが多く開発されています。これらのツールを活用することで、解析の効率化だけでなく、手作業が減ることで客観性を高めることができます。具体的な解析手法については別の記事で解説します。



⑤形状変化の判読性が非常に高い


GM法全体のデメリットとして、結果としてはきだされる形状変化の判読性が低く、一般の方や外野の研究者には理解しにくいという点がありました。3DGM法では、ランドマークの変位に合わせて参照3Dモデルを歪ませることで、実際の形状変化を可視化することができます。そのため、3DGM法の結果描写は判読性が高いだけでなく、見栄えも良くできます。





初回となる今回は3DGM法の基礎的な解説をしました。


近年のAIの急速な発展も相まって、ランドマークベースの解析手法に代わるいくつかの自動形態表現化手法が開発されていますが(例えばThomas et al. (2023)のmorphVQなど)、導入するには専門的な知識やそれなりの環境が必要です。そのような理由から、3Dモデルを用いた包括的な形態変異解析手法のうち、3DGM法が現在もっともメジャーな手法のひとつであることは間違いないと思います。


今後しばらくは3DGM法を活用した研究が増加しそうなので、わたし自身もこの潮流に乗れるよう努力していこうと思います。



次回②3Dモデル編では、3DGM法で用いる3Dモデルの収集方法やソフトを用いた編集方法について解説します。


質問やご指南等ございましたら、コメント欄やわたしのメールアドレスにお願いします。



 
 
 

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